自由を求める薬剤師

薬剤師として幸せに働くために、『仕事・お金・私生活』について考えるブログです!

患者さんのために行動する喜びと悲しみ

皆さん、お元気ですか?

私は風邪をひいてしまい、少しブログをお休みしていました。健康は本当に大切なので、皆さんも体を大切にしてくださいね。

 

さて、今回は、患者さんからとある質問を頂き、それに答えたときのお話です。学生や新人薬剤師に対する事例として面白い話かなぁと思うことと、薬剤師として収入アップしていくうえで考えさせられる話だなぁと思ったので、書かせていただきます!

よろしければ、皆さんも自分目線でご覧ください。

 

 

 

患者さんからの質問

『小学校6年生、43kgの息子にカロナール錠200mgを2錠では弱いですか?』

こんな質問を受けました。

 

まずは添付文書をチェック

添付文書を参照すると、「通常、幼児及び小児にはアセトアミノフェンとして、体重1kgあたり1回10~15mgを経口投与し、投与間隔は4~6時間以上とする。なお、年齢、症状により適宜増減するが、1日総量として60mg/kgを限度とする。ただし、成人の用量を超えない。」との記載がある。

体重43kgの場合は、1回量が430mg~645mgが推奨され、1日総量は2,580mg以内となる。これをそのまま当てはめると、『430mg以上が推奨なので、400mgではやや弱い』となります。

しかし、成人の用法用量を見てみると、鎮痛の場合は『1回300~1000mgを経口投与』で、解熱の場合は『1回300~500mgを経口投与』となります。ここでのポイントは大人も300mgの服用OKということですね。

また、注意事項として、 「小児科領域における解熱・鎮痛の効能又は効果に対する1回あたりの最大用量はアセトアミノフェンとして500mg、1日あたりの最大用量はアセトアミノフェンとして1500mgである。」との記載がある。ここでのポイントは500mgは子供の最大量ということですね。

上記の内容に、自身の臨床経験や処方医の意図を組み合わせ、患者状態などを把握して答えを出す必要がありますね。

 

患者さんから必要な情報を入手しよう

それでは、患者さんに質問してみましょう。欲しい情報は、カロナールが処方された時の状況と、何故カロナールを飲もうとしているかですね。

カロナールはいつ、どのように処方されたものですか?』

『今回、どんな症状に対して使いたいのですか?』

と聞いてみたところ、

カロナールは、もともと頭痛持ちでもらっていた。

○今回、コロナワクチンを受けたら、翌日から頭痛と発熱があって辛そう。

○以前処方されたカロナール錠200mgを2錠のんだが、あまり効いた感じがしなかった。

○15歳の兄がカロナール錠500mgを飲んでいたので、もしかしたら量が少ないのでは無いかと思って電話した。

○既往歴、併用薬、副作用歴は何もなし。

とのことでした。

 

患者さんの質問の奥に隠れているものは?

だいぶ情報が入ってきましたね。

コロナワクチン後の副反応に対して、以前頭痛薬として処方されたカロナールをその時の用法用量で服用することに対する相談になります。

私の私見も入りますが、年齢や体重、医師の処方意図などを鑑みて、400mgの服用は妥当であることをお伝えしました。ということで、質問の回答は、『カロナール200mgを2錠でも弱くない』となりました!

では、これで終了で良いか、と言えば、決してそんなことはありませんよね。

今回の質問の奥には、【どうやったら子供の辛い症状を取ってあげることができるか?】という思いがあるわけです。そこを回答しなければ、薬剤師として何も為していないのではないでしょうか?

さらに、私の解釈にはなりますが、【私の対応は間違っていたのだろうか?】という母親の思いもあったように感じました。

 

薬剤師としてどのような対応ができるのか?

ここからは、本当の質問、『コロナワクチンの副反応と思われる、頭痛と発熱にどう対応したら良いか?』について回答していきます。

まず、お母さんの対応は問題なかったとことをお伝えした上で、今後の対応について考えます。対応方法に正解は無いと思いますので、事例の一つとしてご参考頂ければと思います。

既往歴などの兼ね合いから、副反応の可能性は非常に高いと判断。発熱、頭痛はいずれも副反応として頻度が高い症状です。が、コロナワクチンの副反応ではないというリスクもあるので、念のためそのフォローを。症状が耐えられない場合や数日経っても改善しない場合、あるいは咳や痰などの症状が出てきた場合は、かかりつけ医に受診をするよう促しました。

厚労省のコロナワクチンQ&Aでは、「国内20歳以上の数万人を対象に実施された健康状況調査では、これらの副反応のほとんどは、接種翌日までに出現し、通常は数日以内に回復しています」、と記載されていたので、参考にしています。

 

副反応であれば、基本的にカロナールで様子を見ることが第一選択となりますが、現時点で母親の不安感があるので、薬剤における2つのパターンを考えました。カロナールの増量②解熱鎮痛剤の変更です。そして、③経過観察というパターンを最後に伝えました。

カロナールの増量については、薬剤師の判断では不可と判断。医師への受診上で増量検討を提案。医師が500mgを処方するかは不明。その際、400mgから500mgに増量されることによる効果は大きくは無いことを推測し、お伝えしました。また、500mgというのは、15歳未満の最大量であり、アセトアミノフェンは安全性は高いが肝機能障害などを防ぐために安易な増量は推奨されないと説明しました。

②薬剤変更も手段として存在する事を説明しました。先程も紹介した、コロナワクチンのQ&Aでは、「日常使い慣れた解熱鎮痛薬を使用することは問題なく、子ども(15歳未満)ではアセトアミノフェンを使用する場合が多いです。」との記載があるため、推奨するわけでは無いと指導。市販のロキソニンSについて話になりましたが、小児の適応が無いため購入はオススメできない。しかし、成分のロキソプロフェンが小児に禁忌な訳ではないので、受診することで処方される可能性はあると説明。

③薬剤の変更に関しては、医師の処方次第の部分があることを説明したうえで、このまま様子を見ることも提案しました。現状落ち着いているようであれば、副反応の場合は回復傾向に向かうので、家で休んでいたほうが良い可能性もあります。カロナールの服用も、全く効かないわけではなく、多少は効果があったのであれば様子を見るということも選択肢の一つと説明。

 

上記2点の説明をまとめると、

・今回の状況において自己判断での増量や市販薬の使用は避ける

・病院を受診することでカロナールを400mg服用する以外の対応策もあるが、医師の判断による

・様子を見るという選択肢もある

ということです。

市販されている子供用の鎮痛剤の使用を勧める提案もあったかもしれませんが、自分自身があまり詳しくなかったこともあり、今回は提案せず。市販薬も有名どころはポンと出るようにしておくと理想ですね。

結局、受診しないと詳細な判断はできません、ということを言っているのですが、薬剤師として伝えるべき情報を伝えているかどうかで、患者さんの気持ちは大きく変わります。最初から、『不安なら受診してください』では、薬剤師の存在意義がなくなってしまいますよね。

 

質問から答えまでの流れ

今回の質問は、『小学校6年生、43kgの息子にカロナール錠200mgを2錠では弱いですか?』でした。これをまともに受け止めて、『そんなに弱くはないです。子供なら一般的です。効き目に不安があれば受診してください。』という回答で終わっては、ちょっと悲しいですよね。常に、患者さんからの質問の奥には、何が隠されているのかを考えながら対応していくことを心掛けなければいけませんね。そして、きちんとエビデンスを調べたうえで、患者さんの精神状況を考えながら、一薬剤師としての結論をだすことが重要だと思います。もちろん、今回の私の対応がベストという訳ではないですし、最終的に重要なことは、患者さんがその後どうなったか、ですよね。ここからのフォローも大切になります。

今回の内容は、学生さんや新人薬剤師さんに考えてもらうには良い事例ではないでしょうか?良ければ題材として使ってみてください。

 

収入としてはどうなのか?

さて、これを収入という点で見てましょう!

私が今回の対応に費やした時間は約6分でした。電話を切ったときにちゃんと確認したんです。この6分で、私が生み出した利益はありません。(薬剤情報提等供料の算定も可能ですが、次回来局予定も未定のため、一旦無視してください。)

この日、私は一人薬剤師で約3時間の業務時間で36人の患者さんに投薬しました。1時間で12人。切り良く、5分に1人を対応している形ですね。薬歴は流石にこの時間内にすべて記載はできませんでしたが、今回の対応している時間があれば、1人の患者さんを対応することは可能ということです。その場合、利益は2,000~3,000円程度見込めるでしょう。

今回のような電話対応や来局による健康相談などを頻繁に行うことで、患者さんの満足度を上げることができますが、処方箋を持参した患者さんを待たせることにはなってしまいます。結果、バタバタすることが増え、ミス(調剤に限らず)をするリスクや、残業が増える、他スタッフにしわ寄せがでる、などに繋がります。

患者対応の良い薬局にどんどん患者さんが集まれば良いのですが、実際は立地による選択の方が優先されてしまいます。近いって便利ですもんね。結果として、良い対応をしたからと言って、簡単には来局する患者数は増えないんです。

私事ですが、チェーン店で働いていたころ、患者さんへの丁寧な対応を金銭的に評価されたことは一度もありませんでした。が、店舗運営のスムーズさに関しては重要視されていました。極論、今回の電話対応に対して、私から見て残念な対応をした方が、店舗運営にはプラスに働き、評価が上がる可能性があるということです。

ずっと続く薬剤師としてのジレンマ

勘違いが無いようにお伝えしますが、チェーン店の対応が悪いという話ではありません。薬剤師として、患者さんに喜んでもらうということで、直接収入アップにつながらないというジレンマをお伝えしたかったんです。

『患者対応も大切だけど、店舗を上手にまわしてくれ!』

よく聞く話ですよね。患者対応の部分は、在宅医療や地域活動などの言葉も入ります。このジレンマに立ち向かうため、フリーマンは新たな働き方を模索しております。独立をしない薬剤師も、自らの医療信念をもって働けるようにならなければ、薬剤師は企業の道具になってしまいます。それは避けたいですよね。

 

大変長くなりましたが、お付き合いいただき、ありがとうございました。

体調不良もあってか、話がまとまりきらなかったかもしれませんが、皆さんに何か良い影響があれば幸いです。

本日もどうもありがとうございました!